2017/05/01

作品に対する質問の答え(Sanctuary)



Title: Sanctuary(サンクチュアリ)
Year: 2016
Media: Oil on cotton panel (パネルに綿布、油彩)
Size: 970×2606 mm


作品に対する質問をよく受けるのですが、全てに丁寧に答えることは難しいです。
なので少しでも参考になればと思い、VOCA展2017に出品した作品「Sanctuary」に関して学芸員Oさんからの質問に対する答えを記しておきます。拙い文章でお恥ずかしい(文章って書いた人の頭のレベルを露呈しますよね)。


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上野の森美術館学芸員・Oさんからの作品に関する質問に対する答え:篠原愛

1、作品は篠原さんの心象風景という感じでしょうか?作品を描く際の発想源はどういったところにあるのでしょうか?
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作品をつくるときの発想源は、だいたい二つあります。
一つ目は「幼い頃から日常の中で目にしてきたもの」。例えば自然の中の動植物、南国のうねるような樹木、ビビットな花や蝶や鳥、好きな漫画やアニメの見せ場のシーン、その中のキャラクターの感情豊かな表情など。
二つ目は「過去に読んだ本、また作品を描いているその時に読んでいる本の内容」。小説でもノンフィクションでも画集でも実用本でも漫画でも、なんでも。


2、描かれた少女たちには鱗が生成されてきていますが、奇妙な動物(怪物?)に変態、あるいは同化していく過程なのでしょうか?
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少女は進化過程の女の人魚、奇妙な動物は男の人魚、という設定で描いています。

「アイルランド語のメル(海)とオウ(少女)でメロウは人魚を意味する。また、スイーレ(海の乙女)の語彙もあるという。さらに男の人魚をマードックと呼ぶことがあるともいう。メロウ(女の人魚)は、いつも美しく、オリーブ色の肌と水かきのついた指を持っている。これに対してマードック(男の人魚)は体格は立派だが、醜い姿をして、豚のような目、赤い鼻、みどりの歯や髪の毛だとしている。」
『ものと人間の文化史 143 人魚』田辺悟/著 法政大学出版局 

上記を参考にしました。


3、少女たちと、奇妙な動物(怪物?)にそれぞれ意味、もしくは何らかの役割は与えているのでしょうか?
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同上。

4、山下先生が画集にセクシャルなイメージが反映されていると書いていましたが、そのような意識はありますか?
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あります。「性」という人間の根源的な欲求は、私の制作テーマの大切な要素です。今回は女の人魚と男の人魚の交配、という極めてわかりやすい表現にしました。周りに描かれている蝶も、雌雄の対になっています。

5、レース的な赤い服?と着物の帯のような水色の紐?が見られますが、個展でもこのようなものが描きこまれた作品がありましたが、これらはどのようなところから出てきたものでしょうか?発想源や描くようになったきっかけ、あるいは意味などは何かありますでしょうか?
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この二つは特に深い意味はなく、装飾的な要素を絵画に取り入れたかっただけです。レース(西洋的なもの)と、和風の模様を施したベルト(日本的なもの)の対比を描きたかった。ただ一番見て欲しい箇所は、ベルトの先端にあるアクセサリーの丸の中に描かれたマークです。三人とも違うマーク(ハープ、トランペット、音符)を表しています。
「セイレーンには3つの種類がある。2つは半身が乙女、半身が魚。3つめは半身が乙女、半身が鳥。3つそろって、歌を歌う。1つはトランペット、1つはハープを奏で、3つめは美しい声で。その調べがあんまりすばらしいから、それを聞いて引き寄せられぬ者はない。とりこにした人々をセイレーンたちは眠りに誘う。そして、彼らが眠ったとみると、その命を奪うのだ。【リシャール・ド・フールニヴァル『愛の動物誌』1250年】」
『人魚伝説 (「知の再発見」双書)』ヴィック・ド ドンデ 著 荒俣宏訳 創元社

上記を参考にしました。


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以上です。



2017.5.1 篠原愛